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大学ところどころ


北大のロックバンド   北海道新聞 昭和40年12月21日(朝刊)

健全なエレキ自負


盛況だった初リサイタル

【記事】

 ”学術の蘊奥(うんのう)を極め、人格を陶冶(とうや)し、もって国家枢要の人物を育成”すべく
建てられた旧帝国大学の構内に、いまエレキがひびき渡り、動物のようなさけびがこだましている。

 だが、このような目で見る戦前・戦中派こそ時代遅れらしい。北海道大学はもはや日本帝国主
義のにない手だった帝国大学ではないし、エレキをかなでているのは大学当局によって学内公認団
体とされている軽音学部である。

 第一回リサイタルが開かれた十五日夜開演前のひととき、部長の椎谷泰世君(教養2年、農学部
進学決定)に会った。

「そりゃあ親やきょうだいまでも猛反対でしたよ。しかし、立てばパチンコ、すわればマージャン
の手合いと比べたらどちらが健全だと思いますか。高校でエレキ演奏会の入場を禁止するなんての
はどういう神経でしょうか。非行とは絶対に関係ないですよ」との意見だった。

 会場前の客席は九分の入り。入場料は百五十円と安いが、エネルギーではち切れそうな若者ばか
りだ。しかも半数以上が女性で大半が短大生、洋裁生、男の子は高校生が多い。一番前の方に、中
学生の坊やの一群と、女子高校生が陣取っていた。「北大にはいってエレキやれたら最高カッコい
いぞ」とは、坊やたちの率直な感想である。

 そろいのカウボーイ・スタイルで北海学園大”ライクリー・フェイセス”がフォークソングを三十分演
奏してから、本命の北大ザ・バイカウンツが「朝日のあたる家」をかなでながら登場した。

 大ダイコにメーカーの名がそのまま残り、トップ1、リズム2、ベース1のエレキ奏者のセビロ
が一見兄貴のお下がりふうなあたり、やはり旧帝大ふうのやぼくささ、だがどうして演奏はなかな
かビートとやらがきいている。ロックバンド、つまりロックンロールのバンド、そのまたつまりは
ビートルズふうのボーカル・バンドなのだそうだ。

「アニマルズ”のレパートリーから!!! 」とドラムのバンドマスター椎谷君が次の曲を紹介したとた
ん、激しい拍手のあらしと中学生たちの口笛が起こった。黒セーター、細身のズボン、ビートルズ
ふうの髪と椎谷君はひときわアカ抜けたスタイルだが、その歌いっぷりもみごとなもの。頭をのけ
ぞらせ、髪ふりみだしてすごくパンチのあるしゃがれ声を場内いっぱいにひびかす。近くのマニア
らしい人が思わず「うまい」と喚声をあげた。

 最後はハワイアンのマウナケア・アイランダース。椎谷部長は「女性歌手もほしいが、北大には
そんな気のきたのはいない」という。わずかに顔を赤らめながら、しとやかに聞いている短大生、
彼女たちのような存在はどうも北大にはないらしい。